こんにちは!コンシューマメディア部ディレクター浪越です。

制作ディレクターとして、サイトの改修に着手することがありますが、その際どうやって改善点を見つけるかがいつも問題になります。

色々なサイトを見て便利な機能を探して、改修に取り入れることができないかを考えることはとても重要です。

しかし、もっと問題解決に効果的な方法はないのか…。グループインタビューやユーザビリティテストなど、簡単にできればいいのに…。と思うディレクターさんもいらっしゃるのではないでしょうか。

実はユーザビリティテストであれば、テストするユーザーも含め、3人いれば実施が可能なのです。

今回は、簡単にできるユーザビリティテストの方法をご紹介いたします!

グループインタビューとユーザビリティテストの違い


まずは、混同されがちなグループインタビューとユーザビリティテストの違いをまとめます。
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グループインタビュー


【目的】
人間の集団の考えを導き出すための方法。ユーザーの要望や不満の把握のために行う。
【規模】
・進行役 1名
・グループメンバー 3名〜5名
・記録者(もしくはカメラやボイスレコーダー等) 1名
・グループメンバーの人数や話の進行にもよりますが、2時間〜3時間を数回行う
【特徴】
・グループの対話形式の進行のため、自由な意見が出しやすい
・話題の方向性が制御できないので、主題とは関係ない話題での時間浪費の可能性もありえるため、司会の進行スキルが求められる
・調査したいコンテンツを実際に利用している人が調査の対象となるため、テストユーザーをグループ単位で集めるのが難しい

ユーザビリティテスト


【目的】
制作側の意図が実際の利用者に伝わっているのか、コンテンツに慣れた制作側と、実際のユーザーとの意識の差を見つけるためのテスト。
【規模】
・進行役 1名
・テストユーザー 1名
・行動調査役 1名
・基本的なインタビューアンケートを含め、1名につき60分程度を3名〜5名に行う
【特徴】
・小規模でも大きな効果が得られる
・ごく少数でテストの実施が可能
・ネットを使ったことがあればユーザーとしてテストに協力してもらえるため、対象が選びやすい

以上のような違いがあります。
それでは実際にテストを行うために必要な準備をはじめてみましょう!

テスト前に用意するもの


【1回のユーザビリティテストで必要なこと/もの】
・テストユーザー1名
・テストユーザーが使い慣れたノートPC
・進行役1名
・動作確認者1名
・動作チェックに必要なサイトのイメージを印刷した紙
 (各箇所のチェック点を書き入れるため)
・質問する内容をまとめたもの
・簡単なアンケート用紙
・謝礼

【環境】
・静かな部屋
・あればビデオカメラ(音声の録音、画面遷移、マウス動作の記憶用)

PCが変わるだけで操作性が異なるので、できれば普段使っているノートPCなどを用意してもらえるように確認してみましょう。

進行役はテスト環境を作り出したり、ユーザーに普段のネットの使い方を聞いたりしながら、緊張をほぐしたりします。気の長い穏やかな人が適任だと思います。会話の流れで試験の状況を作り出すので、話上手な人だとなお◎です。

動作確認者はこっそりと後ろに立ち、事前に印刷したサイト画面図にメモを取る係です。

ここでマウスが止まった、意図しないバナーを押した、リンクが分かりづらいとつぶやいてた…などなど、テストユーザーの起こした行動をとにかくメモします。

事前にコンテンツメンバー内で、改善したいと思っている箇所の試験パターンを洗い出しておきます。パターンに一連の動作の関連性があると、テストユーザーが混乱せずに動作を行えるので、スムーズにテストを行うことができます。

アンケート用紙は、リンクは読みやすかったか、文字の大きさは適当か、など質問する内容以外で気になることをまとめて最後に回答してもらいます。

環境に関してはあくまで補助的なものです。ネットに繋がっていて、ある程度静かであればどこでもできるのがメリットです。ビデオカメラは、あれば後で行動を見返すことができるので便利…くらいの重要度です。

また、テストユーザーには「テスト」という言い方はせずに、「調査への協力」として参加してもらいます。自分がテストされるんだ…という緊張を与えないで自然体で参加してもらうことが重要になります。

実際に行ったテスト内容


進め方は、進行役があらかじめ対象者のネット利用に関することをいくつか質問した後に、掲示板を使ってもらう流れを自然と作り上げることから始まります。

今回のテスト対象者、Aさんはサッカーが好きだったので、

「サッカーの情報を探すときにはどのようにしていますか?検索したときに掲示板を見つけることはありますか?掲示板は色々な情報を収集するには便利なツールでもありますよね」

という流れで、「サッカー情報を集めながら交流する掲示板を作ってみるという想定の元で、まずは掲示板を作成してください」とユーザーに伝えました。

1回目のテスト内容は、

・掲示板を新規で作成して下さい
・掲示板タイトルとデザインを変更してください

という指示でした。ただし、これはあくまでテストのイントロです。

1回目と2回目のテストの間に数日おき、わざと掲示板を荒らして、掲示板が荒らされた場合のユーザーの対処法を確認しました。

実はこちらがメインのテストになります。

自分が作った掲示板にひどい書き込みがされて、テストユーザーはテストとはいえかなりショックを受けたようです。

2回目のテスト内容は、

・掲示板が荒らされました、NGワードとして設定して、さらに掲示板が検索エンジンに引っかからない設定にしましょう
・荒らされた複数のレスを削除して下さい
・書き込み上限まで荒らされた、1つのスレッドを整理して下さい
・先ほど整理したスレッドを完全に削除して下さい
・掲示板を休止させてください
・掲示板を再開させてください

上記の箇条書きの内容を、進行に合わせて無理のない流れとしてユーザーに意識して操作してもらいます。

ユーザビリティテストの結果は…


5人を対象にテストに参加してもらったのですが、ほとんどの人が同じところでつまずいたり悩んだりしていました。

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今回のテストに集まったユーザー層はバラバラなのですが、制作側としては問題ないと思っていた作りにはだいぶ問題があったようです。

上の図は結果の一部ですが、黄色は一人がつまずき、赤は複数の人がつまずいた問題の場所です。緑枠の内容は、問題点に対する改善案です。

改善案をもとに再度コンテンツ内部で話し合いをして修正し、再度同じ人たちに改善後のコンテンツで同じ試験をしてもらいます。これの繰り返しでユーザビリティを向上させていきます。

やってみて思ったこと


普段、テスト対象のサイトを使わない人でも、問題点を見つけてもらうことは可能だということが分かりました。サイトを使ったことがない人は意見の対象外なのかというとそうではなく、逆に使わないからこそ見える問題点が多いことに驚きました。

ただし初心者だからといって、あまりに操作を誘導し過ぎるとテストの意味がなくなってしまいますし、テストへのモチベーションを維持させつつ自力で頑張ってもらう会話をする必要があります。

それさえクリアすればインターネットを使ったことがある人なら、どんな人でもテストの協力者として参加してもらえるのが良い点だと思います。もちろんそのサイトを普段使っている人であれば、もっと簡単にテストをすることが可能です。

重要なのは、リニューアルの工程で何度もユーザビリティテストを繰り返し、ブラッシュアップしていくことです。

機能要望などはグループインタビューで、問題発見はユーザビリティテストで、と使い分けてより良いサービスを展開したいですね!

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参考にした本


ウェブユーザビリティの法則
ユーザ中心ウェブサイト戦略