あえてlivedoor ニュースを読んでもらうために

はじめまして、『livedoor ニュース』を担当しています大谷です。『livedoor ニュース』は、ニュース提供元から日々配信される数千本の記事(コンテンツ)の更新を“365日24時間”体制で行っています。そういう点からもわかるように、ほかのコンテンツの更新感覚とは若干質の違う体制で運用しています。もちろんスタッフひとりで運用するには物理的にムリがありますから、3交代のシフト制を採っており、必然的に関わるスタッフも多数になっています。私は、このトピックスの管理・運営の統括、情報ベンダーとの交渉をおもに担当しています。

若い世代の新聞の購読率が低下していることは、皆さんも実感としてお分かりだと思います。それに反比例するかたちで、日常的に“ニュースサイト”を通して情報収集を行う人の割合が増えているように思います。各ポータルサイトはもちろん、情報ベンダーである新聞社も、そのほとんどがサイトを立ち上げ、記事を配信しているわけですから、『livedoor ニュース』にとっての“ライバルサイト”というのは、かなりの数が存在しているといえるでしょう。

では、『livedoor ニュース』は、いかにしてライバルと差別化を図ろうとしているのか? 言い換えると“あえて『livedoor ニュース』を読んでもらう”ために、どのようなことを行おうとしているのか?

本日はその点も含め、私たちが日々の運用のなかで大量に発信されてくるコンテンツを捌きつつ、クオリティを維持し、高めるための施策をお話したいと思います。少々大げさですが、“今の『livedoor ニュース』の思想”について敷衍(ふえん)してお伝えすることで、現場の雰囲気を感じていただければと思います。

・誰のために?

これは広告媒体の資料でも公にしていることですが、ポータルサイトlivedoor のメインのターゲットは、以下のような方々になっています。

・若い男性
・情報に対する感度が高い方
・マスメディア離れが進んでいる方
・情報発信力に優れている方

『livedoor ニュース』は、“ポータルの顔”と呼べる位置にあるコンテンツですから、当然このような方々を念頭において運用するように心がけています。

・何を?

端的には、『YouTube』やブログといったインターネット関係の単語を思い浮かべればわかるのですが、新聞や雑誌などを眺めていますと、それぞれ、「ユー・チューブ(動画投稿・共有サイト)」や「ブログ(日記風簡易サイト)」のような表記になっていることに気がつきます。つまり、これらの単語は、まだまだ世間的には馴染みの薄い単語だということです。

老若男女をターゲットとしているニュースサイトの場合は、こうしたことにも注意を払う運用が必要ですが、『livedoor ニュース』の場合は少々違う方向性を持っています。インターネット関連の、どちらかというと先進的な内容だったり、多少突っ込んだウラ事情的なニュースを積極的にトピックスでお薦めしているのです。そうすることでユーザーは、著作権の問題や技術の進歩、既得権や既存のシステムとのバッティングなどについて、「『livedoor ニュース』を見れば情報が得られる!」という期待を持って読んでもらえると考えています。

あるいはユーザの特性から、SNSやブログの普及で、記事のネタ探しとしてニュースサイトを閲覧する方も多いと思いますので、上記のような記事をきっかけに議論を深めてもらったり、「なるほど」「役立つ」「びっくり」できるような記事もバランス良く配置できればと思っています。

また、大手メディアの記事(事件の内容)はもちろんのこと、場合によってはテレビなど、他媒体の報道の姿勢に対するインターネット上の意見を俯瞰することができるような、情報ベンダーのラインナップも目指しています。たとえば、ほかのニュースサイトでは掲載されていない情報ベンダーニュースグループの独自取材・編集記事の掲載もそのひとつですね。従来の「ニュース記事」の概念にとらわれないという点では、有名ブロガーさんの記事など、ユニークな記事を情報ベンダーとすることを通し、“右・左”の立ち位置にとどまらない、“上・下”も視野に入れた、より複眼的なニュースを捉えることができるようにと思っています。

スポーツニュースにおいても、日本のメディア発の記事も掲載しつつ、あえて日本のメディアのフィルタを通さない現地発の情報も届けることができるよう、“海外直輸入”の記事を情報ベンダーに加えることで、スポーツファンの期待に応えられるようにしています。

・どのようにして?

ひとつは、ユーザーの生活も想定に入れるようにしています。ユーザーのニュースサイトへの接触のシチュエーションを想像すると、だいたい以下のようになるのではないでしょうか。

1:朝出社して、始業する前にメールチェックとともに閲覧
2:昼休みに閲覧
3:終業時、閲覧
4:帰宅後、テレビのニュースを見ながら“詳しく知りたい”と思って閲覧
5:週末はじっくりニュースを見てみる

2や3の場面では、マーケットのニュースは当然外せないでしょうし、5の場面では、一週間を振り返ったり、生活に密着したニュースに関心が向くことでしょう。『livedoor ニュース』では、このように曜日、時間帯で、ユーザーがどのような状態で記事に接するのか、頭でイメージしながら運用するようにしています。

・本当に正しいのか?

ただし、以上のような“思想”は、ともすると私たちのひとりよがりになってしまいがちです。気付いた方もいらっしゃるでしょうが、このようなマクロな視点が正しいのかを検証するのはもちろんのこと、ミクロな部分でも、トピックス1本1本の単語の並び順に至るまで、正解があるわけではありません。当たり前の話ですが、ここまで書いてきたような目標や施策を策定したり「それじゃあやっていきましょう」と共有するのは、どこでもやっている話だと思います(ここまで長々と書いてきた事をひっくり返してしまうようですが)。

・実際のところ。

では何が本当のところ大事なのかといいますと、目標や施策を策定するのが本来の目的ではなく、実行しつつ、微調整を加えていくことにあると思います。『livedoor ニュース』の場合、1分あたり数百人のユーザーが見ている計算になり、反応(記事へのアクセス数)も毎分変動します。従って、日々というよりも毎分毎分がトライ&エラー。つまり、微調整も可能になると同時に、必要に迫られてくるのです。上記のような目標・施策についても、社員・アルバイト関係なく、スタッフ同士で真剣に議論して決定し、とにかくすぐに実行に移し、検証・見直しを行っています(これが、冒頭であえて「“今の”『livedoor ニュース』の思想」と書いた理由になるのですが)。そのスパンは、場合によっては1日だったりもします。これはけっこう大変なことです。

会社としての livedoor の雰囲気とも共通していますが、この積極的かつ短期的なトライ&エラーこそが、『livedoor ニュース』の“思想”だともいえるでしょうし、ユーザーにあえて『livedoor ニュース』を読んでもらうための道筋であり、画面の向こうにいる、顔の見えないユーザーの期待に応えられるような“紙面づくり”に少しでも近づくことができるのではないかと思っています。