『livedoor ニュース』にてIT(コンピューター)ニュースを担当している庄司です。日々の業務で向き合っている、ITニュースにおけるコンテンツ成長への取り組みと変遷について考察してみたいと思います。

■情報コンテンツの変遷
IT系情報ニュースは、ニュース(速報性)とレポート(取材やレビューなどの情報)をメインコンテンツとして形成されてきました。情報の早さと量を中心に成長してきたといってもよいでしょう。livedoor をはじめとするポータルサイトのITニュースは、今日までそうした記事の提供を受けて読者に配信をしてきました。

インターネットニュースが登場してから現在に至る過程で、インターネットにおけるニュースコンテンツは、上記の目的と内容において確立したといえるでしょう。しかし、Web2.0などの新しい時代への移行に伴い、1年ほど前からニュースコンテンツに求められている需要に、大きな変化が発生してきています。

■読者ニーズの変化

ニュースサイト運営にとって重要なのが、読者ニーズのベクトルです。これまでのニュースコンテンツに対する読者ニーズは、速報であり情報であったといえます。しかしながら、インターネット上のニュース情報は、現在ではいたることころで入手可能となっています。

読者にとってニュース(速報)という情報は、もはや特別なものではく、どこでもいつでも手にはいるものとなっています。また、現在の膨大なニュースの情報は、理解する前に流れては消えて行くため、読者の知識として定着しにくいものとなってきています。

ポータルサイトは情報を集約することで、複数のサイトを巡る手間を省くという利便性があります。しかし、これまで通りのコンテンツ運用では“読者が求める知識”としてのニュースという意味であれば、読者のニーズに応えることができません。サイトを成長させるためには、読者のニーズに応えるコンテンツ拡張と向上への施策が問われるわけです。

■求められるコンテンツとは

ポータルサイトの情報コンテンツは専門サイトとは異なり、幅広い情報が求められます。個人ブログレベルの情報からタブロイド誌、週刊誌、新聞など、既存の情報メディアも含む幅広いコンテンツが求められます。ひとつのサイトでインターネット上のすべてのコンテンツを提供することは、事実上は不可能といえますので、読者に応じた記事の導入から編成における運用の最適化まで、常に更新していくことが必要となります。

この際に重要なのが、読者ニーズの把握と自社コンテンツの分析です。読者ニーズは、ページビュー(PV)やユニークユーザー数(UU)、トラックバックや読者からのご意見などをもとに分析と解析を繰り返すことにより、指針を策定します。365日毎日アジャストを繰り返し、成長目標とコンテンツ強化の着地点を探りながら最適化に取り組まなければ、サイトの成長は実現はできません。

この解析と分析における強化の着地点を策定するノウハウが、サイト運営にとって重要な企業秘密ともなるわけです。

■二次元から三次元化する成長モデル
ここで情報サイトとしての成長モデルをみてみましょう。

・ニーズと開拓
サイトを成長させるには、「読者を増やす=読者開拓」と「コンテンツ品質の向上=記事開拓」に分けられます。読者を増やすには、読者が求めるものを調査または分析し、読者のニーズに対応できる記事コンテンツを確保・開拓しなければなりません。

では、読者が求める記事をすべて集めれば必ず成長できるのでしょうか? 答えは“ノー”です。ただコンテンツを集めるだけでは、読者にコンテンツを届けることができないからです。

・計画的なコンテンツ強化と運用による読者への提供
サイト成長をスムーズに進行させるには、時間軸に沿った読者開拓と連携するコンテンツ育成が必要となります。コンテンツは、下記のような段階的な軸線上での拡張ステップを、読者の反応を確認しながら進めていくことが要求されます。

記事量の確保 > 記事(種類)の多様性の確保 > 記事品質の向上(含む独自性)> 読者への提示品質の向上


こうしたステップは一過性で完結はせず、これをひとつのサイクルとして繰り返す必要があります。その理由は、すべてのフェーズをクリアした段階で、いちばん重要な読者ニーズがスタート時点とは確実に異なっているからです。つまり、1サイクルを通す間に読者の成長や変化により読者ニーズに変化が生まれるということです。したがって、課題のフェーズをクリアした時点が現在の読者に対する次のフェーズのスタート地点となるわけです。

コンテンツの強化フェーズは二次元的なモデルから、スパイラル(螺旋)構造をもつ三次元的なモデルへと移行させていく必要があり、読者と向き合いながらスパイラルな展開を繰り返すことで成長という結果に近づくことができます。

余談ですが、コンテンツ強化を企業内で恒久的に実行することは、私たちの livedoor に限らず、多くのサイト運営者にとっても困難なことでもあります。企業内では、予算やマンリソースなど、サイト運営では多くのトラブルが発生するため、スパイラルな成長モデルを維持することも担当者の手腕として問われたりします。

では、コンテンツのスパイラルステップを無限に繰り返せば、サイトは無限に成長できるのでしょうか? 実は、これも“ノー”なのです。

■成長し続けるためには
スパイラルモデルで永久に成長し続けられない理由は簡単です。このモデルでは、“読者”と“コンテンツ”を結びつけている構造に限界があるからです。限界点までは、このモデルでも成長は可能ですが、それ以上の成長には新しい“読者とコンテンツ”のコンタクト構造を確立しなければなりません。つまり、三次元的なコンテンツモデルを内包し、読者動向に連携した多次元モデル化が必要となるわけです。

次世代のニュースとは、どうあるべきなのでしょうか?
次世代のニュースサイトに求められるものは何か? そのひとつが多次元的なモデルの形成ということになりますが、そのために必要なものは、ソーシャルコンピューティングへの転換ということになります。それはいずれまたの機会があればということで、今回はこの辺で失礼させていただきます。