こんにちは、小久保です。今回は受託開発事業と自社媒体事業におけるディレクターの意識の違いについて書きたいと思います。

弊社はもともとウェブ関連のSI事業から始まっており、私が入社した5年前もほとんどの仕事がウェブの受託開発・運用でした。

そこから紆余曲折がありながら、現在のメディア事業中心の会社へと変化してきたわけですが、その過程における組織変更はまさに試行錯誤の連続でした。

以前、面白法人カヤックの柳澤社長が「受託開発と自社開発の両立」という記事を書かれていましたが、この記事を読んだときに「やっぱりどこも同じような悩みをかかえているんだなぁ」と激しく共感したことを覚えています。

ところで皆さんは、受託事業と自社媒体事業について一般的にどのようなイメージを持たれているでしょうか? 弊社が事業シフトの過渡期にあったときに頻繁に出ていた声は以下のようなものでした。

受託 = クライアントに詰められて大変、常に作り続けないといけない辛さがある
自社 = ワイワイやってて楽しそう、納期意識とかトラブル意識が低そう


確かに、受託開発事業からシフトしていこうとするときに発生していた不公平感はこの点から生まれていました。ですが、本格的に自社媒体事業に力を入れれば入れるほど、そのシビアさが身にしみて分かってくるのです。

先の記事で柳澤社長は「やったことが自分にモロに跳ね返ってくる自社サービス」という表現をされておりましたが、自分たちですべて決めたサービスがまったく流行らないで赤字だった場合、それは誰の目から見ても明らかに自分たち自身の責任なのです。また、労働集約型の受託事業と違って、こうやれば必ず黒字化できるという理詰めで考えられるものではないのも自社媒体事業の厳しい一面です。

このようにまったく違った厳しさを持った両事業ですが、受託開発事業から自社媒体事業にシフトする際に、ディレクターとして必要な意識改革のポイントをまとめてみました。

【受託開発事業】
●求められる主な能力
・企画を仕様に落とし込む能力
・開発工数の見積もり
・対外的な折衝能力
・プロジェクト進行・納期管理

●意識のポイント
・開発工数を第一優先に考え、無駄な仕様は極力排除することが必要
・すべてにおいてロジカルに考えることが必要とされ、社内調整もロジカルに進められる
・サービスの仕様が本質的にイケてない場合でもクライアントの意向が尊重される
・最終的には「クライアントの要望だから」という免罪符が存在する

【自社媒体事業】
●求められる主な能力
・業界動向や競合サービスに関する情報収集能力
・多くのユーザーに使ってもらえるサービスを考える能力
・サービスの企画・仕様策定
・媒体の収益化施策
・プロジェクト進行・納期管理

●意識のポイント
・最終的にサービスレベルを決めるのは自分達自身。言い訳のしようがない。
・メンバーがいかに同じ目標を持って進められるかが重要
・根本的には周りから信頼されないと何も進められない

このなかでまず最初に頭を切り替えなければいけないのは、受託開発は仕様に落とし込む際に「いかに開発工数の膨張(めんどくささ)を排除するか」です。そういう方向で考えていきますが、自社媒体では「サービスが流行るためには何が必要か?」ということを最優先し、開発工数はその次に考える点だと思います。

私自身も、この最初のポイントでの頭の切り替えがなかなか上手くできずに苦労した経験があります。特に受託8割、自社2割ぐらいの状態のときが、いちばん頭の切り替えに苦労しました。空気を読まずに開発にアイデアをぶつけてみるというのが意識改革の第一歩なのではないでしょうか。

現在、受託開発事業と自社媒体事業を両方抱えているネット企業に働いているディレクターの方は非常に多いと思いますが、これらの私の経験が、何か仕事上のヒントになれば幸いです。