ロケタッチのつくりかた

はじめに



この記事は、ライブドアが7月15日にリリースした新サービス「ロケタッチ」の開発メンバーが、リレー形式でお送りする連載企画です。

サービスの企画・開発に携わる方々の今後のヒントとなれるよう、プロデューサー / ディレクター / デザイナー / プログラマー / マークアップエンジニアなどそれぞれの視点から、ロケタッチ開発時の課題と、それを乗り越えるために行った工夫をご紹介していきます。

こんにちは、佐々木です



これまで「プロデューサー」を名乗ったことはなかったのですが、ロケタッチで果たした役割ごとのノウハウを連載にするということで、「プロデューサー編」の担当をすることになりました。よろしくお願いします。

プロデューサーとは?


ちなみにここで私がいうプロデューサーの役割というのは、

(1)「コンセプト設計」
(2)「いちユーザーとしての試運転」

のふたつです。
これは言うなれば、誰よりも遠くから眺めつつ、誰よりも近くから見つめる、ということ。今回はこのふたつ視点から、ノウハウをまとめてみたいと思います。

私たちは世の中をどう変えたいのか? という夢



ロケタッチのまず最初の課題は「競合に対してどう差別化するか?」ということでした。先行する「foursquare」などのサービスとの違いをどう打ち出していくか、ということばかりを考えていました。
しかしその過程で、問いの質が変化していきました。

・私たちがそれをやる意味はなにか?
・私たちは誰を幸せにしたいのか?
・私たちは世の中をどう変えたいのか?

競合サービスを基準とした相対的な価値基準から、自分たちを中心とした絶対的な価値基準に変わった、という大きな変化です。そしてそれこそが、企画・開発のスタートラインでした。

ここに至るまでに、具体的には以下のようなことをしました。

・ブレインストーミング/ワークショップ/KJ法などでアイデアを出してみる
・イベント/セミナー/勉強会に出かけてみる
・外部の専門家を呼んでカウンセリングを受けてみる

そして「私たちがそれをやる意味はなにか?」「私たちは誰を幸せにしたいのか?」「私たちは世の中をどう変えたいのか?」といった問いに答えを出していきました。

楽しい会議の様子


キックオフからリリースまでの4ヶ月のうち、前半2ヶ月はこれらの作業とペーパープロトタイピングだけに費やしました。

プログラマーの吉川さんは「キックオフからコード書くまでがこれだけ長いプロジェクトは初めてだ」と言いましたが、私も初めてです。これまでとは比較にならないくらい、念入りにやりました。

2000年代前半とは違って、海外サービスのコピーをやればなんとなく普及しちゃう、という時代ではありません。パチモンはすぐ見抜かれるし、タイムマシン経営が成立するような時間差もなくなりつつあります。
だからこそ、日本人ユーザーの琴線にふれるコンセプト設計が大事だと思って、こだわりました。

思い出すのは、開発メンバーで「第5回ジオメディアサミット」に出席して、帰りに下北沢にある静岡おでんの店で終電ぎりぎりまで飲んだとき。あの夜、夢や希望を語り合った手応えが、プロジェクトの原動力になりました。

細野晴臣と高橋幸宏と坂本龍一が、こたつでおにぎりを食いながら、マーティン・デニーの「ファイアー・クラッカー」をシンセでカバーして界的大ヒットをねらう! といってYMOを結成したように、ロケタッチは下北でおでんを食いながら適度な距離のコミュニケーションの復活と地方活性化の夢を見て産声をあげました。

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販売元:Sony/Bmg Int'l
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どんなアマチュアバンドもビートルズのような成功を夢見る権利があるように、実装する機能も何にも決まってないサービスにも、夢見る権利があります。というよりむしろ、夢こそが必要です。

そうすることで、その後の開発期間は迷いなく一直線に突き進むことができました。
動き出したプログラムのバグを直すのは一瞬ですが、動き出したコンセプトの誤りを正すのは、1年以上かかります。ぜひ、時間を惜しまずやってみることをお薦めします。

ちなみに、カウンセリングは「えとじや」さんにお願いしました。ご興味ある方は、コンタクトをとってみてください。

せっかく作ったものをないことにする無神経さ



プロデューサーのもうひとつの役割は、「いちユーザーとしての試運転」です。

開発にどっぷり浸かると、いちユーザーとしての正常な判断ができなくなります。これ要らないんじゃないか? と思ってもせっかく作った機能だから心情的に外せない、とか、誰々さんが作ったデザインだから文句いいづらい、とかね。

でも、それではいいサービスはできません。
誰を幸せにしたいと思ったか? という問いに立ち返って、いちユーザーとして試運転することが必要です。

朝令暮改と罵られようとも(というほどロケタッチの開発チームは殺伐としてませんでしたが)、「ごめんやっぱりそれいらない」と前言撤回する無神経さが必要です。

そのためには、自分自身がどっぷりと開発に浸かってしまわないように、ディレクターと役割分担するのがいいと思います。もしあなたがディレクターで、そのチームにプロデューサーがいなければ、外にその機能を求めて、素直に耳を傾けましょう。

具体的にはグループインタビューやアンケート。これは、お金をかけなくたってすぐにできますので、ぜひやってみてください。ロケタッチでは、社員を対象に、Google Docsのフォーム機能を使って何度もアンケートを行い、それをおおいに参考にしました。

さいごに



というわけで、ライブドアで新しいサービスをやってみたいという方は、ぜひこちらのページからご応募ください。夢と無神経さをもったプロデューサーを募集しています。

採用強化中!


以下、今後の連載予定。
ディレクターブログが読めるのはライブドアだけ!

第1回 プロデューサー編 (佐々木) ※本記事
第2回 ディレクター編 (荒井)
第3回 デザイナー編 (小黒)
第4回 プログラマー編 (吉川)
第5回 マークアップエンジニア編 (浜)
第6回 プログラマー(ケータイ版)編 (平野)
第7回 プログラマー(iPhoneアプリ版)編 (浅見)

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