ディレクターブログ担当の渡邉雄介です。
2007年6月から始まったこのディレクターブログも早いもので3年半になりますが、2011年はいくつか大枠のテーマに沿って更新していこうかとスタッフ内で計画しています。

その内のひとつが「」です。世の中にはプロジェクトマネジメントやディレクションに関する本がたくさん出ていますが、ディレクターである以上、少なからずそういった本は読んでいるはず。
そこでlivedoorのディレクター自身が実際に仕事で役に立った、気持ちが変わったと実感した本を、月に何度か持ち回りで紹介していく予定です。

というわけで年末から連投になりますが、まずは私からまいります。

スケジューリングに関して影響を受けた本


熊とワルツを - リスクを愉しむプロジェクト管理熊とワルツを - リスクを愉しむプロジェクト管理
著者:トム・デマルコ
日経BP社(2003-12-23)
販売元:Amazon.co.jp
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最初にご紹介したいのは、プロジェクトマネジメントの大家、トム・デマルコとティモシー・リスターの共著『熊とワルツを』です。
割と大規模なプロジェクトでは、Excelやガントチャートなどを用いてスケジューリングすることがほとんどだと思いますが、最初からガチガチにタスクや工数を詳細化して、現実味のないスケジュールを立ててもいずれ破綻することは目に見えています (大雑把すぎるのはさらに問題がありますが)。

ディレクターになりたての頃は、仕様の追加・変更のたびに鬼のような目になって再調整…… というようなことを繰り返していたのですが、そもそも要求仕様の追加や変更は避けるようなものではなく、本書を読んでからは、そういったことが起こったときにその都度対処するよりも、ある程度は最初から見込んでスケジュールを切ることの大切が身に染みてわかりました。

P124
新しいプロジェクトのスケジュールを立てるときには、たいてい増大を見込んでいないのが実状である。次のような理屈で考えているせいだ。

 Xがほしいとおっしゃるなら、10カ月で納品しましょう。
 途中でX以外のものがほしくなったら、それはそちらの問題です。

しかし、それは違う。動く的を射ることは、誰もが抱える問題である。発注者が今ほしいと言ったとおりのものを未来に納品しようと考えるのは、さっきレシーバーがいた場所にフットボールを投げるようなものだ。

それより、こう考えるべきである。「Xがほしいということですが、われわれの経験からいって、その要求は途中で変わり、最後には若干違ったものがほしくなるでしょう。そこで、予想される変更に対応できるようにXの開発計画を立てるつもりです」

また、同じくトム・デマルコとティモシー・リスターの共著『ピープルウエア 第2版 − ヤル気こそプロジェクト成功の鍵』もおすすめです。

前半は人材・オフィス環境の面から、もっと働きやすい職場にするにはどうすればいいかの考察で、これも示唆に富んだ内容なのですが、後半 (第四部) の「生産性の高いチームを育てる」からの組織論は、複数人のチームで仕事を進める上でも非常に参考になりました。

"問題解決" に関して影響を受けた本


ディレクターをしていて、いまだによく悩むのは、自分が「わからない」ことに対してどういった行動を取るかについてです。ルーチン的な仕事はもちろんあるのですが、今までの経験と照らしあわせても解決策がまったく見当たらないような問題に出くわすことも意外と多いのではないでしょうか?

そんな「わからない」ことを「わかる」ようになるために、「わからない」から「わかる」までのプロセスを徹底的に分析・実践したのがドナルド・C・ゴースの『ライト、ついてますか―問題発見の人間学』と、作家の橋本治さんの『「わからない」という方法』の2冊です。

ライト、ついてますか―問題発見の人間学ライト、ついてますか―問題発見の人間学
著者:ドナルド・C・ゴース
共立出版(1987-10)
販売元:Amazon.co.jp
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P53
問題とは認識された状態と望む状態の間の相違なのだから、ある問題を「解く」ために状態を変えると、一つ以上の別の問題を発生させることになるのがふつうである。標語的にいえばこうなる。

 すべての解答は次の問題の出所

われわれは決して問題を追い払うことはできないのだ。問題と、解答と、そして新しい問題は、終わりのない連鎖を織り出している。期待できるのはせいぜい、「解いた」問題がよりやっかいさの少ない問題で置き換えられることだけである。

「わからない」という方法 (集英社新書)「わからない」という方法 (集英社新書)
著者:橋本 治
集英社(2001-04-17)
販売元:Amazon.co.jp
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P89
「知らない人間」を相手にする時は、「相手がどこまで知らないでいるか」を把握しなければならない。でなければ、ただのスレ違いである。ところがしかし、「知っている人間」は、時としてそこまで頭が回らないのだ。

自分は「もう知っている」のだから、それは「常識」なのである。自分も含めて、それを知っている人間達はみんな知っている——だからこそ「常識」なのだと思う。しかし、「知らない人間」は、それをこれから知っていくのである。つまり、まだ知らない。

これらの本を読んだからといって「わからない」ことが「わかる」ようにはもちろんならないのですが、わからないときにどういった心構え・思考プロセスで考えた方がいいのか、一歩引いて冷静に検討できるようになりました。

意思決定の仕方・責任の取り方に関して影響を受けた本


アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)
著者:Scott Berkun
オライリー・ジャパン(2006-09-07)
販売元:Amazon.co.jp
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マイクロソフトのプログラムマネージャーを務めていたスコット・バークンの著した本書は464ページとかなり分厚く、読了できるか不安だったのですが、貼った付箋の数は50を超え、個人的には最も影響を受けた本のひとつです。

ディレクターになりたての頃、大した経験もないのに何から何まで自分が決定しなければならないと勝手に思い込み、大きなプレッシャーになっていた時期がありました。

どこまでがディレクターの決めることか、については議論の分かれるところではあるのですが、ディレクターはプロジェクトの舵取り役ではあっても、プロジェクトのあらゆる局面で自分が最適な問題解決者であることは少ないのではないでしょうか。何がなんでも決めようとするのではなく、個々の問題を解決するために最適な人を見極め、適切に相談できることが大切だと本書を読んで実感しました。

P184
あなたが誰かから意思決定を依頼されたからといって、あなたがその意思決定に最適な人材であるとは限りません。あなたがある種の意思決定において他の人よりも長けているということは、他の人があなたよりも長けている意思決定があることを意味しています。つまり、オールマイティーではない自らの意思決定能力をあてにし過ぎてはいけないのです。プロジェクトマネージャは、しばしば身近な専門家として扱われます。PMは、マーケティング担当者から見ると技術の専門家であり、エンジニアリング担当から見るとビジネスの専門家なのです。しかし現実のPMは、何でも屋 (そして何の専門家でもない) に近い存在なのです。このため、手元の懸案事項についてあなたよりも詳しい人に電話することをためらってはいけません。少なくとも彼らに相談し、彼らを議論に引き込んでください。さらに、意思決定そのものを彼らに委譲することも考えてください。あるいは、誰が意思決定を行うべきなのかを、彼らに尋ねてください。人間関係が良好なのであれば、お互いに時間が取られることになったとしても、共同作業の中で意思決定を行うのがベストかもしれません。

また、プロジェクトにトラブルは憑き物ですが、たとえ自分のミスではなくてもディレクターが責任を取る必要があります。この「責任を取る」ということが、わざわざミスを明かして、自ら恥をかくようなことだと思っていたことが、恥ずかしながら駆け出しの頃はありました。

極端に言えば、デザイナーやプログラマーと違って、ディレクター自体は何も産み出しません。その代わり、何があっても最終的に責任を取ることがディレクターの存在意義だということを、本書で気付かされました。

P264・265
何かに対して責任を取ったからといって、その何かがあなたの失敗となるわけではありません。それは単に、結果と向き合った上で、状況の解決に対する説明責任を負うということしか意味していないのです。多くの人々は、説明責任を負うことで愚弄や叱責の対象になるというリスクを抱えたくないと考えているため、責任を取るということに対して二の足を踏みます。しかし、優れたマネージャになろうと思うのであれば、まったく逆の態度を取るべきです。つまり、チームやプロジェクトに関することについての職責を追求、行使することで、チームやプロジェクトを成功に導こうとするべきなのです。また、非難されることに対するエンジニアやテスターの恐れを取り除くことで、解決案が優れたものになったり、迅速に実現されるというのであれば、進んでそうするべきでしょう。

以上、4冊です。仕事で行き詰まったときなど、たまにこれらの本を手にとって読み返すことがありますが、本の中から解決方法を探すというよりは、モチベーションを上げる意味の方が大きい気がします。そんな先生のような本に出会うために、これからもまめに読書していきます。