こんにちは。ロケタッチグループのマークアップエンジニア兼ディレクター、hamashun です。

ここ数日で東京はすっかり秋模様ですね。急に涼しくなったので、弊社スタッフの中にも体調を崩している人がいるようです。そんな風邪気味の日は、早めに家に帰って暖かくして栄養を摂って、そしてゲームをするに限りますね。

というわけで、今回の記事は、ゲームに関係した内容です。

ゲーミフィケーションってなに?

ゲーミフィケーション」をご存知でしょうか?これは海外で生まれた概念で、ユーザーエンゲージメントを高めるための方法として注目を浴びています。

ゲーミフィケーションの特徴は、「ユーザーに楽しんでもらって、ユーザーエンゲージメントを高める」ことにあります。「ユーザーエンゲージメントを高める」とは、「ファンになってもらう」と言い換えてもいいでしょう。つまり、ゲーミフィケーションとは、「ユーザーに楽しんでもらって、ファンになってもらう方法」と言えます。

そして、ゲーミフィケーションのために非常に参考になるのが、ゲーム業界のノウハウです。


◆ゲーム業界はゲーミフィケーションの宝庫!

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なぜ、ゲーム業界のノウハウが参考になるのでしょうか?それは、ゲームが人を楽しませるためのものだからです。

生活必需品である電子レンジやテレビなどは、多少使いづらくても使わざるをえないという面があります。しかし、基本的にエンターテイメントであるゲームは、面白くなければすぐにプレイされなくなってしまうでしょう。さらには、それだけでなく、今後の新作を買ってくれるユーザーも減ってしまうかもしれません。ゲーム業界は、常にユーザーを楽しませ続ける必要があるのです。

一方で、ユーザーの側を見ても、セガ・ソニー・任天堂など、各ハードメーカーに固定ファンが付いていますし、ソフトメーカーにも熱心なファンがいることがよくあります。ゲーム業界は、ユーザーエンゲージメントの獲得・向上に成功していると言ってよいでしょう。


◆ユーザーの心理面に注目する

ゲーミフィケーションは、特に人間の心理面に注目します。

人が「ハマる」条件の解説によく用いられる、ミハイ・チクセントミハイが提唱する「フロー」。モチベーションを持続させる目的の参考になる、エドワード・L・デシ や マーク・R・レッパー が提唱する「アンダーマイニング現象」。同じくエドワード・L・デシの「自己決定理論」などがよく登場し引用されます。

※参考リンク
※コラム:ゲームニクスについて

ゲーミフィケーションとよく似た概念に、立命館大学 映像学部教授のサイトウアキヒロ氏が提唱する「ゲームニクス」があります。

心理面に注目するゲーミフィケーションに対して、ゲームニクスは主にユーザーインターフェイスに注目するという点が異なります。しかし、ゲームニクスもゲーミフィケーションも、ゲーム業界のノウハウを応用するという点で共通しています。

ゲーミフィケーションは難しい?

「心理学」というと、ちょっと取っ付きづらそうに思えるかもしれません。しかし、本記事の意図することは、心理学を学ぼうというものではありません。

ゲーミフィケーションに用いられる具体的な要素には、上に紹介したような心理学を学ばずとも、ゲーム好きな人たちならば「ああ、あれが応用できるんだ!」と膝を叩いて納得できるものがたくさんあるのです。
以下に、そのような実例を紹介します。


ロケタッチ

ロケタッチは位置情報を使用した、いわゆるチェックイン・サービスです。スマートフォンや携帯電話を使ってスポットにタッチしていくことで、ご褒美のシールが取得できます。取得したシールを見るページに、ちょっとした隠し機能があります。

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シールをタップすると・・・

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くるりと裏返るアニメーションをして、

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シールの裏側が見られます。

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シールの裏には、謎のコメントと謎のコードが載っています。

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コメントの中には、ゆうていみやおうきむこう・・・という、古くからのゲーマーにはピンとくる、アレを彷彿とさせるものも。

この「シールの裏」は、特にこれといった機能は持っておらず、純粋にお楽しみ要素として用意されています。ゲームで言うと、ストーリーの進行に関係の無いサブイベントや、特殊な条件や行き方で入れる「開発室」に近いものがあります。


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同じく位置情報サービスであるfoursquareのアプリは、スポットの探索をしている間、シンプルなローディングムービーが流れます。この手法はCD-ROM以降のゲームで頻繁に使われているもので、体感待ち時間を減らし、間を持たせる役割を果たしています。

ゲームでは、ローディング中の内から音楽を先に流したり、フェードイン・アウトを利用して「何も起きない」時間を減らしたり、果てはローディング中にミニゲームが楽しめるものまであります(これらの間、ローディングが進んでいるのです)。


ANKER

ANKERは、Tumblr + BBS のようなサービスで、ゲーミフィケーション要素をいくつか盛り込んでいることが特徴です。

ベータテスト

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ANKERでは、2011年7月末〜8月末までの期間をベータテスト期間としていました。この期間はユーザーからアンケートを取り、要望などを参考にして、毎週月曜日にアップデートを実施していました。
このような開発手法は、MMOなどのネットゲームでよく見るものです。

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複雑な操作のゲームでは、チュートリアルが用意されていることがあります。ANKERでもチュートリアルが存在し、基本的な機能を学ぶことができます。

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ANKERには経験値のようなパラメータが存在し、投稿を重ねたり「いいね!」を貰うと、段級位が上がっていきます。この段級位は単なるパラメータではなく、ヘルプメッセージの出しわけにも使われます。初級者の頃には表示されるヘルプメッセージが、中級者になると現れなくなるのです。


◆アクティブサポート

natu02 ライブドアでは、Twitterなどを利用したアクティブサポートを行っています。ユーザーからの質問を待つのではなく、Twitter検索などを行い、困っている人がいたらこちらから声をかけて解決を図るという手法です。

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スタッフのなかには「なっちゃん(@livedoorblog)」のようにキャラが立っている担当もいて、これはネットゲームのGM(ゲームマスター。運営スタッフのこと。ゲームにもよるが、ユーザーと直接コンタクトを取ることもある)的存在と言えるのではないでしょうか。

※コラム:ゲーミフィケーション == ゲーム化 ではない

その名称から、「ゲーミフィケーションとはゲーム化することである」と紹介されることがあります。しかし、そのような説明の仕方は、誤解を招きやすいので適していないと考えています。

ゲーミフィケーションの目的は「ユーザーに楽しんでもらい、ユーザーエンゲージメントを高めること」であり、ゲーム業界のノウハウを持ち込むのは、あくまでそのための手段の一つです。そう考えると、ゲーム以外にも参考にできる業界がありそうです。例えばテーマパークや宿泊施設などでしょうか。

それに、「ゲーム化」と言い切ってしまうと、まるでゲームそのものを作るかのような印象を受けてしまいます。


ゲーミフィケーションは昔からあった?

「ゲーミフィケーション」という言葉は最近生まれたものですが、実は、その要素自体は古くからありました。

例えば、商店のポイントカードは、一定ポイントを貯めると特別な商品と交換してもらえたり料金を割引してくれたりしますが、これも一種のゲーミフィケーションと言えるでしょう。

また、アイスやガムに付いているクジや自動販売機のスロットなども、既に浸透しているゲーミフィケーションと言えます。

さらには、多くの小学生男子がやったであろう(あるいは今も?)、「横断歩道の黒いとこはマグマだから落ちたら死亡ゲーム!」や、「電車や車に乗っている時に電線を見上げて忍者を並走させる謎の暇つぶし」なども、退屈な日常を楽しくするゲーミフィケーションと呼んでよいでしょう。


まとめと今後

ゲーミフィケーションは、「楽しんでもらってファンになってもらうための方法」で、典型的な手法としてゲーム業界のノウハウを応用します。

実際に導入する際には、心理学が主に注目されますが、そこにこだわらず、ゲームの要素やゲーム業界以外の要素も含め、「楽しんでもらって、更にファンになってもらうにはどうすればよいか」を考えると良いでしょう。

また、ゲーミフィケーションは、B2Cに限定されるものではありません。社内でのモチベーションの維持・向上や、人材教育などにも利用できます。
そして、ゲーミフィケーションは、Web業界だけでなく、今後広く浸透していく可能性を持っています。


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