こんにちは、広告事業部でlivedoorニュースなどの広告企画を担当しているプロデューサーの谷口マサトです。
以前のディレクターブログの記事「パソコンを離れてコンテンツを作ったら10倍のアクセスがあった件」でご紹介したように、私のチームでは前例があまりない広告企画制作に取り組んでおります。そんな中、先日公開した以下の企画が反響が大きかったので、その制作背景とネット時代のコンテンツの制作について私の考えを紹介させていただきたいと思います。
▼大阪の虎ガラのオバチャンと227分デートしてみた! - livedoor ニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/7722925/
※こちらの記事は私の個人ブログからの転載です。
ありがたいことに、この記事を読んだ多くの方に「ムダに面白い」とコメントをいただきました。
他にも「普通に広告できないのかよwwwww」「広告なのに面白いwww」といったコメントもありました。「ムダ」とは、広告なのに、告知する映画情報とは別に、なぜかムダにコンテンツが作られている、という事でしょう。
つまり、「広告はコンテンツではなく、つまらないもの」と多くの方に思われているのです。
ただこれは、テレビ番組とCMのように「コンテンツと広告は別物である」という前提での考えです。一方、私がここ数年試しているのは、ネットで「コンテンツと広告を一体化できないか?」という事です。図にするとこういうイメージで、そもそもの情報の組み方を変えてしまうのです。
なぜ上の図のような情報の組み方をするのか、そうしなければ、今のネットでは、ちゃんと制作費をかけてコンテンツを作ることができない、と思うからです。
もちろんこれまでにも、広告賞をとるような、コンテンツとして成立している広告はありました。しかし、それはあくまで個々の広告作品であり、私が作りたいのは、広告とコンテンツが一体になったフォーマット、記事の書き方のテンプレートであり、ある程度練習すれば身につけることができるものです。
ネットでも、普通は広告とコンテンツは分けられています。ウェブメディアも通常は、コンテンツで集客し、そのコンテンツの周りに配された広告で売上をあげようとします。そのように広告とコンテンツが別の場合、PVをあげながら、いかにコンテンツの制作コストを下げるかの勝負になってきます。
コンテンツの制作コストをどんどん下げていけば、何が起こるでしょうか?
「コンテンツを作らない方がよい」という結論にいずれ行きつくでしょう。
誰かが作ったコンテンツにタダ乗りすればよい、という事になってしまいます。
それが全て悪いことではないでしょう。散乱している情報をまとめるなど、図書館の目録のように編集されているものは価値がある。ただその場合「図書館でいう“本”というコンテンツはネットで誰が作るのか?」という問題はまだ残ります。
ここで考えたいのは、コンテンツはそもそもムダで非効率なものではないか?という事です。極端な例ですが、冒険家の三浦さんが80歳でエベレストの登頂に成功した事は、多くの人に感動を与えました。人が感動したのは、それが、かつてなくムダな行為で、非効率で、誰もやらなかった事だからではないでしょうか?
例えばこれがもし仕事だったら、清掃業の80歳の男性に、エベレストの頂上を掃除してもらうのは効率が悪いでしょう。仕事は基本、効率を良しとしますが、コンテンツに限っては、必ずしもそうではありません。むしろ逆向きの努力が必要です。そして、そのムダな努力が人を感動させ、人が集まり、それがビジネスにつながります。
つまりコンテンツビジネスは、どうやって“ムダ”を効率的に生み出すか?という、そもそもの矛盾を抱えているのです。例えばテレビは、コンテンツにCMを挟み込むことで、“ムダ”なテレビコンテンツを生み出す仕組みを作りました。もしCMが無かったら、どうなっていたでしょう?
CMの出稿費からくる制作費がなければ、コンテンツを作ることはできなくなります。テレビ黎明期に、最もコンテンツを作っていたのは映画産業でした。では、映画批評といった、映画コンテンツに乗っかることで安く放送しよう、とテレビ番組の製作者が考えてもおかしくはなかったでしょう。
結果、テレビは延々と新作映画の紹介をしているだけのメディアだったかもしれません。これは過去の話ではありません。今のネットはテレビ番組が生み出す話題に乗っかったコンテンツをよく見かけます。その方が短絡的には、安上がりにPVがとれるからです。ただその先にネットのメディアとしての未来はありません。
メディアは、そのメディア自身で、“ムダ”なコンテンツを生み出す仕組みをもたなければ自立できません。効率が良くなければメディアは存在できませんが、ムダが無ければ、そのメディアが存在する意味をやがて失ってしまいます。ではどうやってコンテンツを生み出すのでしょうか?
ネットではTVCMのような、コンテンツと切り離された広告はユーザーに削除かスキップされてしまいます。そこで、コンテンツと広告を混ぜ合わせ、コンテンツと広告が共にソーシャルメディア上で拡散することを目指しました。こうすれば、コンテンツをちゃんと作るほど広告効果があがる事になり、制作費をかける意味がでてくるからです。
コンテンツと広告を混ぜ合わせるためには、まずは共通のキーワードを設定し、両者を結び付けます。今回で言えば、「ライフ・オブ・パイ」=「虎」=「大阪のオバチャン」という感じです。そして実際の記事では、キーワードを軸に、コンテンツと広告を交互に見せます。
実際に今回の企画書は「池で、虎ガラのファッションをした大阪のおばちゃんとイケメンが漂流している様子を撮影し、話題にすると共に映画を紹介します。元々は少女であったはずのオバチャンが、なぜ虎ガラを着るようになったのか?というオバチャンの人生を取材し、映画のストーリーと合わせて紹介を行います」というだけのものです。これで企画が通ったのは、PR会社の力と、映画会社の器の大きさもありますが。
逆の事をいうようですが、一体化と同時に、「コンテンツ」と「広告」はそれぞれ独立していないといけないと思います。「この商品は良いんですって!」なんてのはコンテンツではなく、そもそも拡散しないからです。したがって、今回の「虎」のようなキーワードは、広告とコンテンツを結びつけるとともに、それぞれを別々に分けてもいます。
このようにして制作費を捻出しても、ネット広告の場合、その予算はテレビや雑誌などに比べると非常に少ないのが現実です。なので、制作費をかけながらも、いかに安くできるか、というコストの見直しを常にしなくてはいけません。今回の大阪ロケも、交通費を減らすため、東京から大阪へ行ったのは私一人で、他のスタッフは全て現地調達しました。
既存の雑誌やテレビのコンテンツの作り方ではネットではペイできません。もっとシンプルに作る方法が必要になります。
同じような話を、堺屋太一が著書「組織の盛衰」で解説しています。映画業界が衰退した理由です。昭和31年には、映画会社の株価は松下電気やトヨタ自動車より高かったのです。その理由は、テレビが普及すると、そのコンテンツ制作を映画会社が行って儲かると思われていたからです。
しかし、実際にはそうなりませんでした。映画のような大型のコンテンツを作る体制は、テレビには過剰だったからです。結果、スタジオも機材もなく、有名俳優も使えない零細プロダクションに、全ての大手映画会社が敗退したという。映画会社が3億円かけて1時間のテレビドラマを作る所を、零細は3千万円で作り、視聴率も負けなかったのです。
堺屋式に言えば、映画会社は、「(映画並みの)制作コスト+適正利潤=適正価格」として制作費を見積もりました。既に大規模な制作体制ができあがっていたため、まずはコストがこれだけかかるという前提で商売をしていました。一方零細側は、「(テレビ側から見た)適正価格 - 利益=制作コスト」で見積もりました。
当時のテレビ局で確保できる制作費を見極め、その範囲で制作できるよう、制作体制を映画よりもシンプルにしました。時代は繰り返すでしょう。テレビコンテンツを作る体制はネットでは過剰で、例えばどのテレビ局のネット動画放送も、新興のニコニコ動画に、少なくとも視聴数ではまるでかないません。
実際に、数年前にネットでもコンテンツを作ろうと思い立ったとき、まず、テレビ系の番組を作っていたプロダクションに相談したが、価格が折り合いませんでした。つまり、「(テレビ並みの)制作コスト+適正利潤=適正価格」ではビジネスが成り立たないので、「(ネット広告の)適正価格 - 利益=制作コスト」の範囲で、制作できることを模索することになったのです。
そして、コンテンツにソーシャルメディアでの拡散力を持たせることで、この適正価格をあげようと思いました。拡散してPVがあがるのなら、広告主はもっと支払ってもよいと思ってくれるでしょう。では、どのようにコンテンツに拡散力を持たせればよいのでしょうか?
まず考えたのは、インパクトがある写真を撮りおろしで作ることです。写真ならそんなにコストはかからないし、みんなが見たことがない構図を企画すれば話題になります。なによりも、写真は一瞬で企画を伝えやすいので、一瞬しか見てくれないネットと合っています。
次に考えたのは、記事を文章主体ではなく、写真を使った紙芝居のような形式にしたことです。ネットでは長い文章は中々読まれないので、写真を見ていればなんとなくわかるようにしました。この「フォト紙芝居形式」のフォーマットで、かなりソーシャルメディアで拡散するようになりました。
拡散するのでネット広告費の適正価格が多少あがり、そのお金で新たな写真を撮れるようになりました。次に挑戦したのが動画です。ただ、ネットで動画は見られにくい傾向があります。そこでアニメGIFを多用して、自然に目に入るようにしました。次の記事などはその典型です。ちなみに振付師を雇う予算がなかったため、直接自分で振り付けまでしました。
▼OL八極拳!オフィスでの護身術から恋愛術まで、中国拳法を日常生活で使ってみた。
http://news.livedoor.com/article/detail/7715082/
アニメGIFを効率的に作るため、まず1分ほどの動画を作り、そこから多数のアニメGIFを切り出すようにしました。そしてアニメGIFを拡散させやすくするため、一つのファイルのサイズが、1M以下になるよう調整しました。これはTumblrで、アニメGIFをアップロードできる上限サイズで、アニメGIFが最も拡散されるのがTumblrなので最適化した方が効果がでるからです。実際に、上の記事について「記事名+Tumblrでグーグルで検索」すれば、アニメGIFが拡散している様子がわかります。
これによって動画も拡散できるので、さらにネット広告費の適正価格があがり、そのお金で新たな動画を撮れるようになりました。そして今、挑戦しているのは、生放送です。これは始めたばかりなので、これから色々な工夫をしていきたいです。
今回以下の番組でニコニコ動画さんと公式にタッグを組んだが、ドワンゴさんのスタッフの優秀さに舌を巻きました。色々と勉強になることばかりで、この分野はこれからも学んでいきたいです。
▼誰でも“今野杏南”とデートできるマシーンと、日本5大都市の美女が登場!
http://news.livedoor.com/article/detail/7739311/
話を少し戻し「ネットでコンテンツを作るために、広告とコンテンツを一体化する」という試みの将来性を考えます。ビジネスとして成立するには、その取引に継続性が無ければなりません。まずこれは、実際にPVの成果が従来のタイアップ記事の5倍〜20倍でているので、PR会社の協力もあり、リピート発注が続いています。
次に外延性、つまり、既存のリピートだけでなく、新規顧客を開拓できるか?についても、上記の様子を見た他の映画配給会社からも声を沢山頂いており、映画業界以外からの相談も多くなっています。そしてもっとも重要なのが発展性で、そのビジネスがスケールするのか?という課題です。
このようなコンテンツを作る作業は属人性が高く、社内でこなせる人の数は限られる傾向があります。そのため、受注できる数に限界があり、大きなビジネスに発展しないことになりかねません。ただそれは、社内にリソースを限った話で、じゃあ外部のクリエイターと連携すればいいのです。
プロデュースと監修を社内で行い、制作作業を社外のクリエイターと連携すればスケールできます。ここで求められるクリエイターは、ネットでウケて、さらに広告とコンテンツを一体化できる人です。良し悪しは置いておいて、テレビ番組もテレビ局というメディアと制作会社というクリエイターが連携して作っています。ネットメディアでもできないはずはありません。
以上、ネットメディアでいかに“ムダ”なコンテンツを効率的に生み出すか?という答えの“一つ”になりましたでしょうか。「コンテンツこそがキング」という言葉は、ネットでも同じだと思います。メディアやプラットフォームは、コンテンツを育てるもので、親であり、脇役でいいのです。
もし「効率的にウェブメディアを運営するには、コンテンツを作らない方がよい」という意見を耳にしたら、聞いてみてほしい。「それではそのメディアは、何のためにあるのですか?」と。
効率という正義の名のもとに、メディアやプラットフォームという脇役が、コンテンツという主役を殺すような事があってはならない。と、あらためて強く思います。それは、やがて自らを滅ぼす事になりかねないからです。
LINE株式会社では、「ムダに面白い」コンテンツをネットで作りたい!というディレクターを募集しています。
※または、入社しないけど外部ブレーンまたはクリエイター・ライターとして一緒に制作して頂ける方も探しています。
その場合は谷口マサト(masatot@linecorp.com)にご連絡くださいませ。
▼採用強化中!LINE株式会社採用情報 - Web広告ディレクター(広告企画全般)
https://linecorp.com/career/position/34
以前のディレクターブログの記事「パソコンを離れてコンテンツを作ったら10倍のアクセスがあった件」でご紹介したように、私のチームでは前例があまりない広告企画制作に取り組んでおります。そんな中、先日公開した以下の企画が反響が大きかったので、その制作背景とネット時代のコンテンツの制作について私の考えを紹介させていただきたいと思います。
▼大阪の虎ガラのオバチャンと227分デートしてみた! - livedoor ニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/7722925/
※こちらの記事は私の個人ブログからの転載です。
広告はつまらないものという前提を否定する
ありがたいことに、この記事を読んだ多くの方に「ムダに面白い」とコメントをいただきました。
-@sasakitoshinao映画「ライフ・オブ・パイ」の宣伝記事? ムダに面白くて全部読んじゃった。それにしてもオバチャンはなぜ豹や虎が好きなのか。/大阪の虎ガラのオバチャンと227分 “漂流”デートしてみた! http://t.co/P6CgJvVTUd
2013/06/01 08:17:06
-@ninagawamika爆笑 RT @higashimura_a: あと、関係ないけど今仕事しながらたまたまこれ見つけて、もう、笑いすぎて仕事にならないわ!!http://t.co/PrLhoi309T
2013/06/05 17:06:45
他にも「普通に広告できないのかよwwwww」「広告なのに面白いwww」といったコメントもありました。「ムダ」とは、広告なのに、告知する映画情報とは別に、なぜかムダにコンテンツが作られている、という事でしょう。
つまり、「広告はコンテンツではなく、つまらないもの」と多くの方に思われているのです。
ただこれは、テレビ番組とCMのように「コンテンツと広告は別物である」という前提での考えです。一方、私がここ数年試しているのは、ネットで「コンテンツと広告を一体化できないか?」という事です。図にするとこういうイメージで、そもそもの情報の組み方を変えてしまうのです。
なぜ上の図のような情報の組み方をするのか、そうしなければ、今のネットでは、ちゃんと制作費をかけてコンテンツを作ることができない、と思うからです。
もちろんこれまでにも、広告賞をとるような、コンテンツとして成立している広告はありました。しかし、それはあくまで個々の広告作品であり、私が作りたいのは、広告とコンテンツが一体になったフォーマット、記事の書き方のテンプレートであり、ある程度練習すれば身につけることができるものです。
ネットで誰もコンテンツを作らない方向への危機感
ネットでも、普通は広告とコンテンツは分けられています。ウェブメディアも通常は、コンテンツで集客し、そのコンテンツの周りに配された広告で売上をあげようとします。そのように広告とコンテンツが別の場合、PVをあげながら、いかにコンテンツの制作コストを下げるかの勝負になってきます。
コンテンツの制作コストをどんどん下げていけば、何が起こるでしょうか?
「コンテンツを作らない方がよい」という結論にいずれ行きつくでしょう。
誰かが作ったコンテンツにタダ乗りすればよい、という事になってしまいます。
それが全て悪いことではないでしょう。散乱している情報をまとめるなど、図書館の目録のように編集されているものは価値がある。ただその場合「図書館でいう“本”というコンテンツはネットで誰が作るのか?」という問題はまだ残ります。
「ムダを効率的に生み出す」という矛盾を乗り越える
ここで考えたいのは、コンテンツはそもそもムダで非効率なものではないか?という事です。極端な例ですが、冒険家の三浦さんが80歳でエベレストの登頂に成功した事は、多くの人に感動を与えました。人が感動したのは、それが、かつてなくムダな行為で、非効率で、誰もやらなかった事だからではないでしょうか?
例えばこれがもし仕事だったら、清掃業の80歳の男性に、エベレストの頂上を掃除してもらうのは効率が悪いでしょう。仕事は基本、効率を良しとしますが、コンテンツに限っては、必ずしもそうではありません。むしろ逆向きの努力が必要です。そして、そのムダな努力が人を感動させ、人が集まり、それがビジネスにつながります。
つまりコンテンツビジネスは、どうやって“ムダ”を効率的に生み出すか?という、そもそもの矛盾を抱えているのです。例えばテレビは、コンテンツにCMを挟み込むことで、“ムダ”なテレビコンテンツを生み出す仕組みを作りました。もしCMが無かったら、どうなっていたでしょう?
CMの出稿費からくる制作費がなければ、コンテンツを作ることはできなくなります。テレビ黎明期に、最もコンテンツを作っていたのは映画産業でした。では、映画批評といった、映画コンテンツに乗っかることで安く放送しよう、とテレビ番組の製作者が考えてもおかしくはなかったでしょう。
結果、テレビは延々と新作映画の紹介をしているだけのメディアだったかもしれません。これは過去の話ではありません。今のネットはテレビ番組が生み出す話題に乗っかったコンテンツをよく見かけます。その方が短絡的には、安上がりにPVがとれるからです。ただその先にネットのメディアとしての未来はありません。
メディアは、そのメディア自身で、“ムダ”なコンテンツを生み出す仕組みをもたなければ自立できません。効率が良くなければメディアは存在できませんが、ムダが無ければ、そのメディアが存在する意味をやがて失ってしまいます。ではどうやってコンテンツを生み出すのでしょうか?
広告とコンテンツ一体化のためのメソッド
ネットではTVCMのような、コンテンツと切り離された広告はユーザーに削除かスキップされてしまいます。そこで、コンテンツと広告を混ぜ合わせ、コンテンツと広告が共にソーシャルメディア上で拡散することを目指しました。こうすれば、コンテンツをちゃんと作るほど広告効果があがる事になり、制作費をかける意味がでてくるからです。
コンテンツと広告を混ぜ合わせるためには、まずは共通のキーワードを設定し、両者を結び付けます。今回で言えば、「ライフ・オブ・パイ」=「虎」=「大阪のオバチャン」という感じです。そして実際の記事では、キーワードを軸に、コンテンツと広告を交互に見せます。
実際に今回の企画書は「池で、虎ガラのファッションをした大阪のおばちゃんとイケメンが漂流している様子を撮影し、話題にすると共に映画を紹介します。元々は少女であったはずのオバチャンが、なぜ虎ガラを着るようになったのか?というオバチャンの人生を取材し、映画のストーリーと合わせて紹介を行います」というだけのものです。これで企画が通ったのは、PR会社の力と、映画会社の器の大きさもありますが。
逆の事をいうようですが、一体化と同時に、「コンテンツ」と「広告」はそれぞれ独立していないといけないと思います。「この商品は良いんですって!」なんてのはコンテンツではなく、そもそも拡散しないからです。したがって、今回の「虎」のようなキーワードは、広告とコンテンツを結びつけるとともに、それぞれを別々に分けてもいます。
コンテンツ制作費の予算制約
このようにして制作費を捻出しても、ネット広告の場合、その予算はテレビや雑誌などに比べると非常に少ないのが現実です。なので、制作費をかけながらも、いかに安くできるか、というコストの見直しを常にしなくてはいけません。今回の大阪ロケも、交通費を減らすため、東京から大阪へ行ったのは私一人で、他のスタッフは全て現地調達しました。
既存の雑誌やテレビのコンテンツの作り方ではネットではペイできません。もっとシンプルに作る方法が必要になります。
同じような話を、堺屋太一が著書「組織の盛衰」で解説しています。映画業界が衰退した理由です。昭和31年には、映画会社の株価は松下電気やトヨタ自動車より高かったのです。その理由は、テレビが普及すると、そのコンテンツ制作を映画会社が行って儲かると思われていたからです。
しかし、実際にはそうなりませんでした。映画のような大型のコンテンツを作る体制は、テレビには過剰だったからです。結果、スタジオも機材もなく、有名俳優も使えない零細プロダクションに、全ての大手映画会社が敗退したという。映画会社が3億円かけて1時間のテレビドラマを作る所を、零細は3千万円で作り、視聴率も負けなかったのです。
堺屋式に言えば、映画会社は、「(映画並みの)制作コスト+適正利潤=適正価格」として制作費を見積もりました。既に大規模な制作体制ができあがっていたため、まずはコストがこれだけかかるという前提で商売をしていました。一方零細側は、「(テレビ側から見た)適正価格 - 利益=制作コスト」で見積もりました。
当時のテレビ局で確保できる制作費を見極め、その範囲で制作できるよう、制作体制を映画よりもシンプルにしました。時代は繰り返すでしょう。テレビコンテンツを作る体制はネットでは過剰で、例えばどのテレビ局のネット動画放送も、新興のニコニコ動画に、少なくとも視聴数ではまるでかないません。
実際に、数年前にネットでもコンテンツを作ろうと思い立ったとき、まず、テレビ系の番組を作っていたプロダクションに相談したが、価格が折り合いませんでした。つまり、「(テレビ並みの)制作コスト+適正利潤=適正価格」ではビジネスが成り立たないので、「(ネット広告の)適正価格 - 利益=制作コスト」の範囲で、制作できることを模索することになったのです。
そして、コンテンツにソーシャルメディアでの拡散力を持たせることで、この適正価格をあげようと思いました。拡散してPVがあがるのなら、広告主はもっと支払ってもよいと思ってくれるでしょう。では、どのようにコンテンツに拡散力を持たせればよいのでしょうか?
コンテンツに拡散力をもたせるには
まず考えたのは、インパクトがある写真を撮りおろしで作ることです。写真ならそんなにコストはかからないし、みんなが見たことがない構図を企画すれば話題になります。なによりも、写真は一瞬で企画を伝えやすいので、一瞬しか見てくれないネットと合っています。
次に考えたのは、記事を文章主体ではなく、写真を使った紙芝居のような形式にしたことです。ネットでは長い文章は中々読まれないので、写真を見ていればなんとなくわかるようにしました。この「フォト紙芝居形式」のフォーマットで、かなりソーシャルメディアで拡散するようになりました。
拡散するのでネット広告費の適正価格が多少あがり、そのお金で新たな写真を撮れるようになりました。次に挑戦したのが動画です。ただ、ネットで動画は見られにくい傾向があります。そこでアニメGIFを多用して、自然に目に入るようにしました。次の記事などはその典型です。ちなみに振付師を雇う予算がなかったため、直接自分で振り付けまでしました。
▼OL八極拳!オフィスでの護身術から恋愛術まで、中国拳法を日常生活で使ってみた。
http://news.livedoor.com/article/detail/7715082/
※アニメ表示されない場合は上の画像をクリックしてみてください。
アニメGIFを効率的に作るため、まず1分ほどの動画を作り、そこから多数のアニメGIFを切り出すようにしました。そしてアニメGIFを拡散させやすくするため、一つのファイルのサイズが、1M以下になるよう調整しました。これはTumblrで、アニメGIFをアップロードできる上限サイズで、アニメGIFが最も拡散されるのがTumblrなので最適化した方が効果がでるからです。実際に、上の記事について「記事名+Tumblrでグーグルで検索」すれば、アニメGIFが拡散している様子がわかります。
これによって動画も拡散できるので、さらにネット広告費の適正価格があがり、そのお金で新たな動画を撮れるようになりました。そして今、挑戦しているのは、生放送です。これは始めたばかりなので、これから色々な工夫をしていきたいです。
今回以下の番組でニコニコ動画さんと公式にタッグを組んだが、ドワンゴさんのスタッフの優秀さに舌を巻きました。色々と勉強になることばかりで、この分野はこれからも学んでいきたいです。
▼誰でも“今野杏南”とデートできるマシーンと、日本5大都市の美女が登場!
http://news.livedoor.com/article/detail/7739311/
外部クリエイターとの連携
話を少し戻し「ネットでコンテンツを作るために、広告とコンテンツを一体化する」という試みの将来性を考えます。ビジネスとして成立するには、その取引に継続性が無ければなりません。まずこれは、実際にPVの成果が従来のタイアップ記事の5倍〜20倍でているので、PR会社の協力もあり、リピート発注が続いています。
次に外延性、つまり、既存のリピートだけでなく、新規顧客を開拓できるか?についても、上記の様子を見た他の映画配給会社からも声を沢山頂いており、映画業界以外からの相談も多くなっています。そしてもっとも重要なのが発展性で、そのビジネスがスケールするのか?という課題です。
このようなコンテンツを作る作業は属人性が高く、社内でこなせる人の数は限られる傾向があります。そのため、受注できる数に限界があり、大きなビジネスに発展しないことになりかねません。ただそれは、社内にリソースを限った話で、じゃあ外部のクリエイターと連携すればいいのです。
プロデュースと監修を社内で行い、制作作業を社外のクリエイターと連携すればスケールできます。ここで求められるクリエイターは、ネットでウケて、さらに広告とコンテンツを一体化できる人です。良し悪しは置いておいて、テレビ番組もテレビ局というメディアと制作会社というクリエイターが連携して作っています。ネットメディアでもできないはずはありません。
以上、ネットメディアでいかに“ムダ”なコンテンツを効率的に生み出すか?という答えの“一つ”になりましたでしょうか。「コンテンツこそがキング」という言葉は、ネットでも同じだと思います。メディアやプラットフォームは、コンテンツを育てるもので、親であり、脇役でいいのです。
もし「効率的にウェブメディアを運営するには、コンテンツを作らない方がよい」という意見を耳にしたら、聞いてみてほしい。「それではそのメディアは、何のためにあるのですか?」と。
効率という正義の名のもとに、メディアやプラットフォームという脇役が、コンテンツという主役を殺すような事があってはならない。と、あらためて強く思います。それは、やがて自らを滅ぼす事になりかねないからです。
LINE株式会社では、「ムダに面白い」コンテンツをネットで作りたい!というディレクターを募集しています。
※または、入社しないけど外部ブレーンまたはクリエイター・ライターとして一緒に制作して頂ける方も探しています。
その場合は谷口マサト(masatot@linecorp.com)にご連絡くださいませ。
▼採用強化中!LINE株式会社採用情報 - Web広告ディレクター(広告企画全般)
https://linecorp.com/career/position/34
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